アイデンティティ論

制作日:2004年8月29日


2004年夏学期に開講された講義の最終評価レポート。いまいち講義内容と噛み
合っていないレポートを出したと自分では思っているが、評価は優。そんな成績
評価で本当に良いのか。
内容は「アイデンティティ」という概念の検討である。一連のレポートの中での
位置づけとしては、人間の内面という扱いにくいテーマを扱えるようにするため
の方法論の模索、といったところであろう。すなわち哲学論文が提示した論法に
基づき社会の病理を論じる際に、個々の人間の内面にはどうしても言及を避ける
ことはできない。しかし人間の内面というテーマは、諸概念の定義が極端に難し
く扱いにくい。そこで「アイデンティティ」という概念を批判することで、取っ
かかりを付けよう、というわけである。なお個人アイデンティティと集団アイデ
ンティティを比較すると、個人アイデンティティの方が遙かに現実を捉えるに当
たっての解像度が高く、従って集団アイデンティティと比較するとコンテクスト
型思考に近いと言えよう。しかし集団アイデンティティは時に被抑圧者の開放を
実現する点で、単純には否定し得ない。
こうした論点は第3章「先進国におけるアイデンティティの状況」以下で論じら
れている。

なお第一章「ふたつのアイデンティティ?」(1)「アイデンティティ論の風景」
には多くの引用が為されているが、相変わらず文献引用の仕方はお粗末の一語に
尽きる(というか未だに引用というものが何の意味を持つのか理解できない。権
威ある書物を引用すれば論文の真実性が増すというのか? むしろ「文献の解釈
が正しくない」という非本質的な批判で足をすくわれる原因を作るだけのような
気がする)引用は読み飛ばしても、論旨は理解できるだろう。




<もくじ>

  1. ふたつのアイデンティティ?
  2. 集団アイデンティティの危険な相貌
  3. 先進国におけるアイデンティティの状況
  4. より踏み込んだアイデンティティ分類の試み


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