<はじめに>

本レポートは「アイデンティティ」なる概念についての疑念から出発
している。すなわち、我々はアイデンティティなる語を日常的に用い
ているが、必ずしもこの概念の内実がよく判っている訳ではないので
はないか。アイデンティティと一口に言うが、その内実には複数の
まったく異なる事物が混入し混乱しているのではないか。本レポート
はアイデンティティという語について、またアイデンティティそのも
のについて考え直す、ひとつの試みである。