<挿入詩>
「真夏の剣(つるぎ)」
・・・陽気な初夏の風が一人腰をおろした
君の前髪を躍らせて草原を駆け抜けた。
ぽつりと立っている木の葉を揺らし
ずっと遠くへ走り去る。
5月の大気の中で草は静かに微笑み
水色の空に白い鳥が一羽だけ飛び立つ。
陽の光は暖かく 風はこんなに優しいのに
君は不思議に思う。この風景は 少しさみしい・・・
君は気付いて短剣を取り出す。この旅の始めに
オリガーシィが君にくれた魔法の剣。
鋭い夏の光から切り出した護りの短剣。
君は鞘を払う。剣は空の色を映した。
夏の光は夏の空へ返そう。旅は終わり
仲間達も各々の道を歩み始めたのだから。
空にかかげた短剣は白い光を帯び
やがて光の粒となって キラキラと瞬きながら
水色の空へと消えていった。
陽気な風が一人たたずむ
君の前髪を躍らせて草原を駆け抜けた。
向こうに立つ木の若葉を青く輝かせ
さらに遠くまで駆ける。
5月の大空の下で草は真夏を夢見て微笑み
青い空に白い鳥が駆け上がる。
陽の光の中で風は軽やかなステップを踏み
君は今度は気付く。
みんな夏を待ちわびているんだ───
世界はこんなに輝いていたんだ
きらめく初夏の光をまとった風は
ラザドの所へもパーツェルにも
レクシオにもファルカラクにも届くだろう。
キジの丘に眠るカラナイの所へも
きっと初夏の香りを届けてくれる。
みんな夏を待ちわびているんだ。
草も木も鳥たちも
初夏の風は光と戯れ
じきに夏を運んできてくれるんだ・・・・・