<はじまりの死体>

執筆:2005年06月30日


――人があまり遠くを見ない理由について。

あまり問う人もいないが
アダムの死体がどこにあるか
最初の人間
最初の罪人
最初の死人
最初の父祖
実はその巨大な体は
死んでも埋葬されることは無かった
そして神に追われた張本人として
死すべき定めの体を授かり

世界のはてで野晒しになっているのだ

その命が人間の罪を表したように
その死体は世界の果てにあって人類の最大の侮蔑
故に人々は世界の中央を見る
世界の中心に上り詰めようと足掻き、人を蹴落とす
決して後ろ
つまりアダムの死体の方は見ない

そして世界の果てでは
その始まりの日から世界が滅びる朝までの間
腐り続けるのだ
世界の果てでアダムの死体は

世界のどこからでも見える
その姿は人類への侮蔑
世界のどこにでも充満する
その死臭は人類への呪い
そして埋葬されなかったのは
人類への警告のため
その死に姿を人類に示し続けるため
世界の果てで声も無く警告し続けるため
最後の終わりの朝まで

ゆっくり腐り続ける

そして世界の果てでは
その始まりの日から世界が滅びる朝までの間
腐り続けるのだ
世界の果てでアダムの死体は