<冬の歌>

制作日:2002年12月15日
加筆完成:2003年7月22日


木々はすべて枯れ果てて
木の葉が古い日々を埋葬するのですね
白銅色の空から冷たい雨がしとしとと
傷口の熱を奪うのですね
池はすっかり凍りついて
魚たちは冷たい水の中にいるのですね

季節はずれに咲き出した
二輪のまっしろなツツジの花は
一週間目に姉が逝き
二週間目に妹が逝った
冷たい雨の翌日に
凍えた体を木の葉の中に横たえて
木の葉が全てをうずめるのですね

すべてが逝ってしまうのでしょうか
そう、すべては逝ってしまう
花を手向けるいとまもないまま
死者は年々大地をうずめ
すり切れ果てたボロの他には
寒さをしのぐ衣服もないまま
儚く散った花を偲んで
冬の墓標に立ちつくす
月は移ろい季節は巡り
星の輝く夜々のあいだに
あれほど敬虔な祈りは無かったのに
流された涙には誰も気付かない

無数の魂は失われ
無数の涙は失われ
無数の想いは失われ
記憶ばかりが降り積もります
すべてが逝ってしまうのでしょうか


それでもまた新しい花が咲きますね


木々はすべて枯れ果てて
木の葉が古い日々に祈るのですね
白銅色の空から冷たい雨がしとしとと
傷ついた心を眠らせるのですね
池はすっかり凍りついて
魚たちは冷たい水の中
春の訪れを待っているのですね