<白い蝶>

制作日:2002年10月9日


暗闇の中から
ひらり、と蝶があらわれました
ひらり、ひらりと
白い翅(はね)の、青白く
ほのかに輝く、そのあどけない
幻でしょうか? 小さくて
あんまりな、あんまりな
小さくて、私は何も言えない
ただ無心にゆれる姿を
じっと

あの白い光は、幻でしょうか?
それとも鱗粉が? 鱗粉が散っているのでしょうか?
その軌跡が、暗がりの中に
しらじらと、きらきらと
幻でしょうか? 幻でしょうか?

今にも消えてしまいそうな
まっ白い蝶を
必死に目で追いながら
私は頭をかかえて
視界はもう、いっぱいになってしまうのです
白い軌跡で、まっ白になって
しろいひかりにつつまれているの?
ただ、願うのです。頭をじっと抱えて
この頭よ、割れてしまえばいい
割れてしまえばいい、と
今なら、私は
私は、生まれたままのまっ白だから
この頭よ、割れてしまえばいい、と
ただそれだけ、切に願うのです
どうして、これだけの事をかなえてくれないのでしょう?

ただ、白い光につつまれて
割れてしまえばいい、割れてしまえば
ただそれだけなのに
白い光に、つつまれて

暗闇の中から
ひらり、と蝶があらわれたのです
私はじっと、見つめていたのです
じっとです。声もなく
見つめていたのです。じっと