悲しい人々


「生きるのに必死な人間に、学問につきあっている暇はないんだよ」

答えを与えない書物
必要な答えは与えられない
与えられる虚偽の答え
今日のたずきを忙しく探し回る
「心を亡くす」と書いて「忙しい」
悲しい人々。

富んだ者、貧しい者、若い者、老いた者、
傷つく者は傷つく
避け得ない血
矛盾。
敏感すぎる知性が、現実と理想の狭間から析出する差分
あまりに析出しすぎた差分
矛盾。

あまりに多すぎる矛盾
避け得なかった血
彼らもまた、生きるのに必死
悲しい人々。

酒に逃避する人々
煙草の煙に逃げ込む人々
身を滅ぼす人々
悲しんでももらえない人々
それもまた悲しい事。
神に救いを求めた人々
たとえばヴェルレエヌ
神に救われなかった人々
たとえばヴェルレエヌ
それでも神に祈る他ない人々
悲しい人々
悲しいヴェルレエヌ
それもまた悲しい事。

繰り返される言葉、悲しみ。
率直で安易な言葉、悲しみ。
口にすると消えてしまいそうな実感
「最初に舞い降りた雪」のように
逃げてゆく現実
逃げてゆく感動
逃げてゆく言葉と表現
韻を踏んでいる暇もない
取り残されて、もう詩は踊らない
何も思わない
もう悲しみも感じない
それでますます悲しくなる。

ドラマのない現実
崩れ落ちる概念「悲劇」
夢に火傷して、皆懐疑主義者。
「そんな事が何になる?」
繰り返される、安直な言葉
麻痺する心、拡がる悲しみ
彼らもまた、生きるのに必死
悲しい人々、人々の、悲しみ。