本レポートの内容はPercy Bysshe Shelleyの思想的変遷の概観、
及び、その美しさを称えられたオード『Ode to the West Wind』の
思想面に重点を置いた読解です。私が個人的に趣味の合いそうなJohn
KeatsやJohn Clareを選ばず、私には脳天気と思われあまり趣味の
合わないシェリーを敢えて選んだ理由は、第一にシェリーが教養の
乏しかったキーツやクレアと異なり、ロマン主義時代の文化人とし
ての平均的教養(あるいは最高の教養)を確実に身に付けていると
考えられる事、第二にシェリーの思想をいくつかのエピソードから
垣間見る限り、ロマン主義の思想傾向のひとつの典型と見ることが
できるのではないかと考えられる事(*1)、第三に超絶の技巧とい
われるシェリーの力を、Ozymandiasのような破格ではない形で、
もう一度自分で味わってみたかったこと等です。また個人的にシェ
リーに対する偏見を除いておきたいという要求もあっての選択です。
ただし限界があることは認めねばなりません。英文学専攻でもな
く、投入できる時間も労力も限られ、以前からの蘊蓄にも頼れない
以上、そう立派なレポートを書けるわけでもありません。本レポー
トはシェリーの思想遍歴については『Ode to the West Wind』以
前に的を絞り、代表作『Prometheus Unbound』までの流れを、
主に高橋規矩著『シェリー研究』(*2)(桐原書店1981)を纏め
る形で、長編詩『Queen Mab』『Alastor』『The Revolt of Islam』
そして『Prometheus Unbound』を比較する形で概観しました。