*1) 「トラウマの起源は、戦争にあるといえます。一九世紀になって、
多くの近代兵器がつくり出され、戦争の様相は一変しました。たとえば、
アメリカの南北戦争や、ヨーロッパの普仏戦争では、大砲などのさまざま
な武器が使われ、市民が動員され、それまでと比べて人体の損傷は非常に
悲惨なものになりました。(中略)この頃、戦闘体験のあとで、兵士が
二度と戦場に戻れない病気が観察されるようになりました。第一次世界
大戦中に、イギリスの精神科医マイヤーズが『シェル・ショック』と
名づけた症状です。(中略)このシェル・ショックがPTSDの原型で
あると考えられています。」(小西聖子著『NHK人間講座 トラウマ
の心理学』P28 日本放送出版協会2000)

*2) 「もう少し具体的に〔トラウマの原因となる〕できごとの種類を
考えてみると、まず一つは、自然災害──地震や、台風や、洪水、竜巻
など──があります。それから、人為災害(具体例を略す)もあります。
(中略)大災害ではなくても、家庭のなかで起こる事故、たとえば、家の
なかでヤカンがひっくり返って大ヤケドをした、といったこともトラウマ
の原因になり得ます。それから、毒物を用いた犯罪や毒物による事故の
被害。(中略)多くの暴力的な犯罪被害もトラウマをもたらす体験です。
(中略)暴力犯罪の被害や、強姦や強姦未遂などの性暴力の被害がトラウ
マとなり得るものです。さらに、最近注目を集めているのが児童虐待の
被害だと思います。(中略)誘拐・捕虜・監禁の体験もトラウマの原因と
なります。(中略)戦闘体験はトラウマの原因になります。(中略)さら
に、親しい人の突然の予期せぬ暴力的な死もトラウマの原因となります。
(中略)通常の生活のなかで起こってくるストレスは、トラウマの範囲に
は含めません。たとえば、離婚したり、病気で家族を失ったり、失業した
り、そういうストレスは多くの人が体験するものですが、このような体験
は通常はトラウマとなるような体験の範囲には含められていません。」
(小西聖子著『NHK人間講座 トラウマの心理学』P22-P24 日本放送
出版協会2000)
 ここに挙げられた諸項目のうち、自然災害(地震や、台風や、洪水、
竜巻など)は被害者が多数に登る点で結果的に社会的な問題となり、人為
災害は労働力の熟練度、就労者の倫理・士気など原因の点で社会状況をやや
反映し、地下鉄サリン事件を初めとする無差別凶悪犯罪や9.11テロに
代表される無差別テロも社会・政治状況を色濃く反映する。戦争の勃発は
間違いなく政治・社会問題を直接的に反映するし、犯罪発生率・児童虐待
の発生も社会状況と切り離して考えることはできない。
 注意すべき点として、小西氏は離婚や病気による家族の喪失をトラウマの
原因には含めないとしているが、実際にPTSDで苦しむ患者が離婚をPTSD
悪化の原因として上げている事を指摘しておきたい。他の原因によってPTSD
を発症しかかっている患者が離婚のストレス下でPTSDを発症したり、離婚に
至る前後の家族関係の混乱で暴力的言動が行われてPTSD発症に至る可能性、
あるいは既に発症しているPTSDを離婚のストレスで悪化させる可能性を考慮
すると、離婚をPTSDの原因としてまったく排除することは難しいのではない
だろうか。
 以下に引用するのは、PTSD患者である女性「Aimee」氏の運営するWeb
サイト「PTSD.info」にある、サイト管理人の過去の履歴からの引用である。
同サイトは小学館デジタル百科事典『スーパーニッポニカ2003DVD』の
「PTSD」の項(吉川武彦著)に関連URLとして挙げられているサイトである。

「相手がアメリカ人で、結婚してからずっとアメリカに渡っていたため、
アメリカでの離婚となりました。稼いだお金はすべて相手にもっていかれ、
アメリカ滞在ビザの手続きも中途半端のまま、強制送還寸前。しかし、元夫
からの精神的なプレッシャーに耐えかねて、なけなしのお金でアパートを
借りて、そこへ逃げ出しました。
性格の不一致、相手が私の病気にまったく理解を示さなかったことなど、
すべての歯車がかみあわなくなってしまったのです。自分で体験してみて
思いますが、離婚は立派なトラウマになります。できれば、経験したくない
出来事のひとつです…。」

 ただし、同氏はこれ以前に既に暴力犯罪・性犯罪の被害に遭い、PTSDを
発症していたので、これが発症の契機になったわけではない。すなわち「ト
ラウマ」という語を心理学の用語として用いていると断言することはできない。
単純に、心から消えない嫌な記憶という程度の意味で用いているとも読みとれる。
とはいえ、原因となるライフイベンツから離婚や近親者の病死を排除する事に
治療的な意味があるか、やや疑わしい。

*3) 菅原教官「認知の発生」講義レジュメ2003より

*4) 高橋三郎・大野裕・染矢俊幸訳『DSM−IV/精神疾患の診断・統計
マニュアル』医学書院1995(小西聖子著『NHK人間講座 トラウマの
心理学』P28 日本放送出版協会2000より孫引き)

*5) 菅原教官「認知の発生」講義レジュメ2003より

*6) インターネット上にはいくつかの情報があった。以下、発見した情報を
列記する。

「PTSDとしてはっきりとした症状を訴える人は約1%〜5%、症状がはっきり
出ない場合は約5%〜10%、特に衝撃的な出来事に遭遇した人に限っては、
7割がかかると推測されている。」(鬱病患者ページより)
<http://www.geocities.co.jp/SweetHome-Brick/3694/index.html>

「比較的多い精神障害で、PTSDの生涯罹患率は男性で5%、女性で10.4%と、
女性が男性の約2倍です。自然災害などの同じトラウマ体験にさらされた場合の
PTSD罹患率は女性が男性の約4倍です。アメリカでは、戦闘後遺症、レイプ
後遺症としてのPTSDがよく研究されています。ベトナム戦争退役軍人とレイプ
被害の女性のPTSD生涯罹患率はそれぞれ、30%、32%です(Kulka RA et al,
1988; Resnick HS et al, 1993)。」
(赤城高原ホスピタルホームページより 院長竹村道夫著)
<http://www2.wind.ne.jp/Akagi-kohgen-HP/>

「一生に一度でもPTSDにかかる可能性は、男性で5%、女性で10%だと言います。
「病気」の中では、かなり頻度の高いものと言って良いでしょう。事故、災害の後に
PTSDを発症する率は数%程度だそうですが、レイプ、戦争などでは、約半数の人が
PTSDを発症するといいます。また、暴力や脅迫を受けた場合は、女性の方が圧倒的
にPTSDを発症しやすいのです(女性では2、30%で、男性の10倍位)(1)。交通
事故によるPTSDでは、事故直後に発症した方は、全員が5年以内に治癒したという
報告がありますが、年単位で症状が続くこともあります。」
(精神科医加藤忠史氏ページより)
<http://square.umin.ac.jp/tadafumi/PTSD.html>

「全体の平均は、930名中62名(6.7%)がPTSDにスクリーニングされた。
男性よりも女性が高い出現率である。また、50歳以降の壮年期に高い出現率が
みられた。一般人口中のPTSD出現率は1〜4%といわれており、今回の調査結果
は、決して低い数値とはいえない。今後、追跡調査を行う必要があろう。
 北西部の児童生徒の6ヶ月後調査と比較してみると、成人(事業所従業員)のほうが
遷延していることが認められた。児童生徒より成人の方が、心の後遺症としてのPT
SDが残存していることが示唆される。」
(鹿児島産業保健推進センターページ「鹿児島県北西部地震における災害の影響と
産業保健(メンタルヘルス)に関する研究」より)
<http://www1.biz.biglobe.ne.jp/~sanpo46/9nenndo2.htm>

*7) 「どのような衝撃的出来事がPTSDの原因となりうるのかについては、多くの
議論があります。例えば、同じような出来事に遭遇したとしてもPTSDを発症する
人とそうでない人がいること、性格傾向や精神障害の家族歴など様々な要因が発症
に影響することなどが、多くの研究によって示されており、「衝撃的出来事の経験=
PTSD発症」という単純な図式は描けないことは明らかだからです。」(日本トラウ
マティックストレス学会ホームページ<http://www.jstss.org/index.html>より)

*8) 「ブランク(Blank, 1993)はPTSDの縦断的経過には、急性、遅発性、慢性、
間歇性、後遺性、再発パターンなどかなりの多様性があることを強調しており
PTSDにおける外傷体験の影響はその体験のタイプによって大きく異なるとして
いる(Blank, 1993)。またハーマン(Harman,1996)らによれば子どもの虐待
の長期的影響は、自然災害や成人期における限定された外傷体験からの影響とは
異なることを指摘しており、子どもの虐待被害者のほうが、トラウマの記憶の
喪失や多様な解離症状を起こしやすいとしている(Saxe et al., 1994)。これら
の事からヴァン・デア・コーク(van der Kolk,1996)らは児童虐待の場合は、人格
形成期に重篤な外傷が長期にわたって繰り返されるため、より複雑なPTSD概念が
必要だとの見方をしており、それぞれ「複雑型complex PTSD」、「複合型
combined PTSD」という概念を提唱し、従来の戦争神経症をモデルとした
「単純simple PTSD」とは区別すべきであると主張している(中根,2000)。
実際、PTSDはDSM-III以来、不安障害のサブカテゴリーに分類されはいるが、
実際のPTSDの症状は多様で、解離性障害、転換性障害、身体化障害などのオーバー
ラップが多く、不安障害よりむしろ解離性障害に分類すべきという議論もある
(中根,2000)。」
(インサイト・カウンセリング・コーポレーションホームページ
<http://www.insight-counseling.com/>より)

*9) 小西聖子著『NHK人間講座 トラウマの心理学』P20-P23
日本放送出版協会2000

*10) *2)参照

*11) 「しかも、アメリカの精神医学者イェフーダらの研究によると、体験者の
子どもの世代もPTSDになりやすい傾向が示されています。」(小西聖子著『NHK
人間講座 トラウマの心理学』P22-P24 日本放送出版協会2000)

*12) 「DSM−IVでは、PTSD を急性と慢性に区別します。症状の持続期間が
3カ月未満の場合を「急性」、3カ月以上を「慢性」とします。心的外傷体験の後、
解離、再体験、回避、不安など反応性の症状が2日以上続き、4週間以内に消失する
場合には、急性ストレス障害(Acute Stress Disorder)といいます。PTSD の
症状発現が、心的外傷後6カ月以上の場合には、「発症遅延」と言います。」
(赤城高原ホスピタルホームページ<http://www2.wind.ne.jp/Akagi-kohgen-HP/>
より 院長竹村道夫著)

*13) 「PTSDの症状は、それ自体が患者に苦痛と感じられてはいても、患者が
外傷的体験の破壊的影響をやわらげ、精神の統合性を辛うじて保つための避難場所、
ある種自己治療としての意味合いがあります。一方、治療過程には、外傷的体験を
思い起こさせたり、問題に直面させる作業を含むので、治療そのものが、患者に
とって破壊的、侵入的に受け取られる危険が大きく、治療によって一時的にはかえって
不安定になったり、混乱状態になることも少なくありません。人格障害をともなう
ような重症例では、一般に治療は長期、困難なものになります。ゆがんだ治療関係
になり易く、PTSD患者が医療から二次的被害を受けることもしばしばみられます。
逆に治療者が、患者に共感的になるあまり、「代理の被害者」になったり、「同情疲れ」
になったりすることも指摘されています。治療者のセルフ・ケアが大切です。」
(赤城高原ホスピタルホームページ<http://www2.wind.ne.jp/Akagi-kohgen-HP/>
より 院長竹村道夫著)

*14) 「心的外傷後に起こりうる精神障害としては、PTSD以外にも、 うつ状態、
パニック障害、解離性障害、行動障害、身体化障害、転換性障害、適応障害、摂食障害、
自傷行為、境界性人格障害、アルコール・薬物乱用を初めとする嗜癖性疾患など、多数
あります。これらはまた、PTSDの合併症としてみられることが少なくありません。
ちなみに、PTSDは、他の精神障害を合併しやすい(合併率8割以上)という特徴が
あります。」
(赤城高原ホスピタルホームページ<http://www2.wind.ne.jp/Akagi-kohgen-HP/>より
院長竹村道夫著)

*15) 「このような事件や事故〔外傷的イベンツ〕を体験した場合に、子供は比較的
ケロッとしているように見えることも多いのです。泣きわめいたりするよりは、むしろ、
しっかりして冷静なように見えることが多いと思います。けれども、子供は大人よりも
トラウマには弱いのです。子どもは言葉ではおとなのように表現できません。おとなの
ように、苦しい、不安だ、腹が立つ、と言葉では言えないのです。でも、おとなと同じ
ように不安になったり、恐れたり、自責感を持ったりします。」
(小西聖子著『NHK人間講座 トラウマの心理学』P85 日本放送出版協会2000)

*16) 「子どもの場合は、反応は行動の変化としてあらわれます。たとえば、集中力の
低下は、授業中に落ち着かないとか、今までおとなしくできていたのに走り回ってしまう
というような行動の変化としてあらわれます。(具体例を省略)子どもの犯罪被害の場合
は、このような子どもに特有の症状を見逃さないことが大事です。サポートするときにも
子どもを安心させられるようなサポートをすることが必要です。」
(小西聖子著『NHK人間講座 トラウマの心理学』P85-P86 日本放送出版協会2000)

*17) *13)参照

*18) 以下の記述は小西聖子著『NHK人間講座 トラウマの心理学』
(日本放送出版協会2000)P103-P106を参考にした。

*19) *13)参照

*20) 「認知行動療法の中では、曝露法(Exposure)が最も多くの対照研究があり、
有効とされています。曝露法というのは、例えば以下のように行います。

治療者「目を閉じて、あの事件をできるだけ詳しく話してください。
できるだけその時の気持ちになって、現在形で話してください」
患者(目を閉じて)「今私は夜の通りを歩いています。周りは暗くて
人通りはありません。その時後ろから足音が近づいてきました。」

[もしも患者の話が曖昧なら、治療者が介入します。「今どんな気持ち
ですか」「どの位不安ですか」「それというのは何ですか」「どうした
かったのですか」などなど。患者の回想と体験談がスムーズなら介入は
最低限しかしません]
 初回のセッションは、45分くらい、2回目以降は40分位かかります。
もし、セッションが早く終わったら、話を繰り返させます。セッション
の内容はテープにとって、毎日家で聞くように指示します。毎週のセッ
ションの初めに、何回家でテープを聞いたかを確かめます。通常はこの
ようなセッションを9回行います。もっと続ける人もいます。回復の
レベルはいろいろです。治療から脱落する人もいます(20-30%)。
症状を消し去るのではなくて、軽くするのだ、と患者に言っておきます。
回想時の情緒的な反応が少ない場合は、効果も悪いようです。
 罪悪感や恥辱感が強くて回想が困難な場合には、認知療法や催眠を
併用します。

*21) EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing
:眼球運動による脱感作と再処理)は、最近マスコミなどでも取り上げ
られることの多くなったPTSD(Post Traumatic Stress Disorder:
外傷後ストレス障害)に対して最も効果的と言われて、大変注目されている
治療方法です。1989年にアメリカでFrancine Shapiroという臨床心理学者
が発表して以来、アメリカを中心に注目を集め、今日ま でに全世界で40000
人以上の心の専門家(精神科医、臨床心理士など)がこの方法のトレーニング
を受けています。日本でもおよそ500名の専門家がトレーニングを終えました
(2003年8月時点)。

 PTSDとは、最近では阪神大震災の後に話題になったのでご存じの方も
多いと思います。強い情緒的衝撃を伴うようなできごと(天災、交通事故、
暴行、虐待など)の後に、そのできごとについて考えたくもないのにその
ことを考えていたり、悪夢にうなされて睡眠が妨げられたり、集中力が落ち
たり、恐怖感・不安感などに悩まされたりするようになって、生活の色々な
面に支障がでるようになる状態のことです。外傷的なできごとがあると、
そこでの傷となる経験は、その経験が生じたときの映像、音や臭い、思った
こと、身体感覚などの形で脳の神経ネットワークに貯蔵されると考えられて
います。通常は我々の脳がその記憶に働きかけ、知人や家人と話したり、
考えたり、夢を見たり、日記に書いたりといった作業の中で、時間の経過と
ともにできごとに肯定的な意味づけをしたり、できごとをより小さく、自分
の世界をより重要視したりすることで乗り越えることができるようになり
ます。しかし、このような作業をしても、いつまでも悲しみや恐怖が弱く
ならない、前向きに考えられない、過去のできごとがその人の中では一向
に過去にならないときには治療が必要となるのです。PTSD以外の精神
疾患の中にも、こうした過去の記憶がいつまでも引っかかっていることが
症状につながっていることは多く見受けられます。

 EMDRは、外傷的なできごとを考えてもらいながら、治療者が患者さん
の眼の前で指を一定の速度で動かし、それを眼で追いかけてもらうといった
比較的単純な手続きを中心とした治療技法です。眼球運動は脳を直接的に
刺激し、脳が本来もっている情報処理のプロセスを活性化できるのです。
ですから、5年、10年かけて、心のどこかに落ち着いていくプロセスを
非常に短時間に進めることができます。そして、その過程は患者さんの
脳の本来の力を引き出すので、マインドコントロールのように洗脳される、
治療者に操られるというような心配は全くありません。また、止めたい
ときにはいつの時点でも止めることができます。また、これまでの治療
方法では、起こったできごとのすべてをこと細かく語ることが必要とされる
ことが多かったのに比べて、大変ストレスの少ない技法と認められています。
(EMDR Network Japanホームページ<http://www.emdr.jp/>より)

*22) 「選択的セロトニン再取り込み阻害剤)がPTSD治療の第一選択薬剤
とされています。多くの場合、2-5週間で効果(症状軽減)がみられます。
 TCA(Tricyclic Antidepressant; 三環系抗うつ剤)もPTSDに有効ですが、
効果はSSRIに劣ります。ただし、戦闘トラウマによるPTSDでは、SSRI
(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)よりもTCA(三環系抗うつ剤)の方が
有効であったという報告があります。一般にTCAはSSRIより副作用が強い
とされています。MAOI(モノアミン酸化酵素阻害剤)は、TCAより効果があった
という報告がありますが、現在MAOIは、日本では使用されていません。
 クロニジン(アドレナリンapha2作用薬、商品名カタプレス)やグアンファシン
(商品名エスタリック)がPTSDの再体験や覚醒亢進に有効であるという報告が
あります。ただしこれらは降圧剤なので、低血圧の患者や降圧剤服用中の患者に
投与するときには注意が必要です。抗不整脈剤のベータ遮断薬であるプロプラノ
ロール(商品名インデラル)も同様の作用がありますが、こちらは副作用として
抑うつ気分や精神運動抑制を引き起こすことがあります。
 カルバマゼピン(商品名テグレトール)は覚醒亢進と再体験に、バルプロ酸
ナトリウム(商品名デパケン)は覚醒亢進と回避、麻痺症状に有効だったという
報告があります。
 ベンゾジアゼピン系薬剤であるアルプラゾラム(商品名コンスタン、ソラナッ
クス)やクロナゼパム(商品名ランドセン、リボトリール)には抗不安作用が
ありますが、処方薬依存に注意が必要です。強い不安や不眠に対する短期間使用
にとどめるべきです。再体験や回避、麻痺に対する効果は期待できません。抗
精神病薬は、第一選択薬剤としては勧められません。著しい覚醒亢進や妄想傾向、
興奮や精神病状態には抗精神病薬の使用も妥当と考えられます。」
(赤城高原ホスピタルホームページ<http://www2.wind.ne.jp/Akagi-kohgen-HP/>
より 院長竹村道夫著)