はじめに

 本レポートはテーマとしてPTSDを扱う。この選択は、私の専
門が社会学・社会思想系であり、これらの立場から発言が可能な
疾患を選んだ結果である。PTSDはもともと戦争との関係の中か
ら注目され始め(*1)、犯罪(性犯罪)や家庭内暴力、大規模
災害等が原因となることが多い(*2)が、これらはいずれも高
度に社会的な事象である。

 なお、参考文献としては小西聖子著『トラウマの心理学』に大
幅に依拠した。

 精神疾患については、第一にその疾患そのものについての情報、
第二にその疾患に罹患した一人の患者に対しどのような対応をと
るべきか、第三に社会全体として、そのような疾患の存在に対し
どのような方策が考えられるかという三つの側面が必要となる。
(*3)このそれぞれについて章を立てて概観する。