II. 作品詳説

※ここではシェイクスピアの作品のうち、新潮文庫に収録された作
品を中心に、同文庫の「解題」「解説」を参考に製作年代、当時の
出版事情と定本、製作の種本となった他の作品、および各作品の雰
囲気、テーマ、込められた思想などについてまとめる。

23. 『トロイラスとクレシダ』

(1) 概観
 トロイとギリシャの抗争に題を採った悲劇。トロイの五人の王子
の一人、トロイラスは神官の娘クレシダに恋をし、クレシダの叔父
パンダラスを通じてついに結ばれる。しかしギリシャに走ったクレ
シダの父は、そこで立てた手柄によって、捕虜交換の形でトロイラ
スのもとからクレシダを呼び寄せる。クレシダは嫌々ながらギリシャ
陣営の父の天幕に身を寄せるが、すぐギリシャの武将ダイアミーディー
ズと愛し合うようになる。ギリシャ・トロイ双方の武将がギリシャ
の陣で酒宴を張った際、トロイラスは偶然クレシダがダイアミー
ディーズと親しく話しているのを見てしまい、戦場にダイアミー
ディーズを倒す決意を固める。苦労して仲を取り持ったあげくに
恨まれ憎まれることとなったパンダラスのむなしい言葉で劇は幕を閉じる。

(2) 作劇年代
 1601年〜1602年頃

(5) 雰囲気・テーマ・思想
 武将達は傲慢な好色漢、クレシダは誓いを破る姦婦といった描き方
で、ロマンスを拒否するようなイメージとなっている。