II. 作品詳説

※ここではシェイクスピアの作品のうち、新潮文庫に収録された作
品を中心に、同文庫の「解題」「解説」を参考に製作年代、当時の
出版事情と定本、製作の種本となった他の作品、および各作品の雰
囲気、テーマ、込められた思想などについてまとめる。

10. 『リチャード二世』

(1) 概観
 リチャード二世の王位が簒奪される内容。「わがままで無定見、
しかも臆病者」ではあるが「精美な感情を持っているリチャード二
世が、冷徹な策士で決断力にも富んでいる従弟ボリングブルックと、
王冠をめぐって争うさまを描い」た作品。リチャードの人物造形は
ハムレットの前身とされる。後の性格悲劇につながるものがある。
(カギ括弧の引用部は中村保男氏著、新潮文庫『ヴェニスの商人』解説より)

(2) 作劇年代
 1595年〜1596年。

(5) 雰囲気・テーマ・思想
 作者によって好意的に書かれるリチャード二世が、その無能の
ために有能だが冷酷なボリングブルックに敗れ、譲位ののち弑さ
れる。好意的に見ることのできる人物が、その性格と周囲の状況
の中で否応なく死に追いやられる点で、後の悲劇時代を思わせる
作品と言えようか。