※ここではシェイクスピアの作品のうち、新潮文庫に収録された作
品を中心に、同文庫の「解題」「解説」を参考に製作年代、当時の
出版事情と定本、製作の種本となった他の作品、および各作品の雰
囲気、テーマ、込められた思想などについてまとめる。
4. 『タイタス・アンドロニカス』
(1) 概観
舞台をローマ帝国にとった復讐劇。ローマの英雄タイタスは帝国
の長年の宿敵、ゴートを破り女王の息子の一人を火炙りとするが、
捕らえながら美貌によって皇帝の后となったゴートの女王タモーラ
とその愛人アーロンの策略で、タイタスの二人の息子は極刑、美し
い娘は婚約者を殺され、強姦された上に両手と舌を斬られ、タイタ
スも両の腕を失う。タイタスは復讐を決意し、タイタスの三人目の
息子はゴート族を率いて反乱を起こす。タイタスは皇帝、皇后タモー
ラ、タモーラの二人の息子を宴席におびき出し、二人の息子をだま
して殺し、人肉料理を宴席に出した上で皇帝・皇后タモーラをも殺
す。タイタスは相打ちとなって命を落とし、ゴートで挙兵したタイ
タスの三人目の息子が新皇帝の座に着く。憎しみと復讐が渦巻き、
血と不具と邪淫の臭いが充満する。
(2) 作劇年代
1593年頃。