4.まとめ

 漠然とした形ではあるが、公共哲学が取り組まねばならない本質的な困難が
指摘できたと思う。これらは真に抽象的なレベルでの思考を要求し、公共哲学
のテーマはその名に恥じない哲学的なものであると言えようが、哲学のアポリ
アを公共哲学は解決しうるのか、困難はあまりに大きい。
 今後の課題として、いわゆる哲学と公共哲学の架橋が必要であると感じてい
る。論理学の通説では規範命題と事実命題は論理的に架橋不可能と捉えられて
いる(*22)が、では事実の真実性以外から、いかにして「正しい」規範が導
出できるのか。現在駒場では××氏がヒュームの因果論について講じており、
△△氏が意志・因果・記号などについてゼミを開講しており、□□氏が「老後
の楽しみにとっておいたんですが……」と呟きつつ自由意志についてのゼミを
開講している。これらのゼミにおける成果と綜合して、相関社会科学の可能性
を探る試みを開始したい。