歪んだ都市が人を病ませ、病んだ人が都市を歪める。都市の屈曲の記述は、
現代都市に生きる人々の病理の記述と分けて考えることはできない。従って
本レポートがどのような都市について記述するかという問いは、本レポート
がどのような人々について記述するかという問いに置き換えることができる。
本レポートは都市民の病理を、筆者を含む一人称としての「若者」を中心に
描く。私自身が病んだ都市民だとしたら、その治療とは言わないまでも、病
理と都市の歪みとの関係を考察せずにはいられない。講義で示された枠組み
を援用しつつ、「成熟」および「人間関係の処理」を中心的テーマとし、若
者が現代都市においてどのように成長してゆくかを見る中で、この病理に迫
る。
なお、本レポートは特定の都市に注目することはせず、我々が知っている都
市一般の姿を材料として考察を進める。現代都市が非場所を目指すなら、現
代都市に関する記述も、必ずしも特定の場所にテーマを絞る必要はあるまい。(*1)