<議論の有効性について>

制作日:2003年8月9日


 現実に生じた問題の解決過程において、議論の有効性は、残念な
がら極めて限定的なものとして見積もらざるを得ない。なぜなら、
人間は互いに互いを信頼していなければ相手の言うことにあまり耳
を貸さないものであり、ある問題を巡って利害が対立した二者は多
くの場合、相手を敵視してまったく信頼しあわないからである。互
いに信頼しあった二者が協調的に問題解決に当たるとき、どのよう
な問題解決手段が有効かと議論するのは有益である。しかし価値観
や政治的主張、行動原理の異なる二者が衝突しているとき、有効な
のは議論よりパワーである。民主主義における選挙制度や裁判制度
の力学を通じて行使されるパワーや、クーデターや暴動、テロリズ
ムによって行使されるパワー、治安当局のパワーなど様々なパワー
があるが、何にせよパワーで相手を黙らせる方が、話し合いなどよ
りよほど現実的である。この結論は悲しいものであるが、問題の当
事者双方が態度を硬化させて相手の話を聞かなくなれば、このよう
な結論は避けられない。そして、人間は至って容易に怒りだし、態
度を硬化させるのである。