あの日あなたの命の日数(ひかず)は
いくらも残っていなかったが、
そんな事はどうでもよくて、
むしろあなたを訪ねた私が
うっかり煙草を切らしたことが
焦眉の大問題だったりしましたっけ。

煙草がないと私は落ち着かなくて
あなたは近くに煙草の自販機を
あわてて捜してくれましたっけ。

ああ、なんだか可笑しかったですね。
アハアハとあなたは笑っていた。
あなたはもう、どこにもいなくて
あなたがふざけて塗ったマニキュアだけが
まだ私の爪にこびり付いていますよ。